最高裁判所第一小法廷 昭和33(オ)496 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士中村喜一の上告理由第一、二点について。
上告人が第一審以来主張する抗弁の要旨は次の如くである。
すなわち、被上告人の前者であるD株式会社と上告人との間には本件手形の裏書
前すでにこれが返還の契約が成立しており、被上告人はこの事実を知悉しながら上
告人を害することを知つて本件手形を取得した悪意の所持人である。従つて手形法
一七条但書により被上告人は上告人に対し本件手形上の請求をなし得べき限りでは
ないというのである。これに対し原判決は挙示の証拠関係に基いてD株式会社専務
取締役Eと上告人との間に手形返還の契約が成立していたことは肯認できるが、被
上告会社の代表取締役であつたFにおいて右事実を知悉していたものとは認められ
ないばかりか、右Fは他方D株式会社の代表取締役ではあつたが、事実上右事実を
知つていなかつたものであり、従つて被上告会社には所論のような悪意があつたも
のとは認められないとの趣旨を認定しているのであつて、前示証拠関係を按ずれば、
そのような認定も不可能ではなく、またこの場合、右FにおいてD株式会社の代表
取締役の資格をもつていたからといつて、必ずしも事実上並びに法律上同人並びに
被上告人において所論悪意があつたものと判断しなければならない筋合があるわけ
のものではない。なお、所論各法条が原判示のような場合に妥当するものとは解釈
できない。それ故所論はすべて採用し難い。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第一小法廷
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裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 高 木 常 七
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